2月。街ではバレンタインムードが漂い始めている。
彼女のいない俺は今年も一人。

そんな折、寂しさを紛らわすために神待ち掲示板を使ってみた。
本当に何の気なしに。

そこで出会った家出少女はめちゃくちゃ可愛かった。
ハーフなのかどことなく日本人離れした顔立ちはフランス人形の様にも見える。
髪の毛はブロンド。
これは染めている色ではなさそうだ。
おそらく地毛なのだろう。

心なしか甘いいい匂いもしてくる。
これは・・・ミント?
そんな匂いだ。

一緒にいて落ち着く。
そんな彼女と二人きり。
俺は彼女をかわいがった。

一緒にいたのは1週間程度だったがとても楽しかった。
それは2月の出来事だった。

数日後。
俺宛に荷物が届いた。
差出人はあの家出少女。

「この間は泊めてくれてありがとう。
楽しい一週間だったよ。また遊びに行ってもいいかな?」

という手書きのメッセージカード。
それと一緒に添えられていた小さな包装紙。

箱を開けると中からチョコレートの甘い匂い。
それも手作りなのか少し形が歪だ。

俺は嬉しくて自然と笑みがこぼれていた。
お礼をしようと一生懸命に作ったのだろう。

それにしても・・・
この量は流石に多くないだろうか・・・

ティッシュの箱程度の大きさの箱が合計3箱。
張り切って作るのは良いのだが、もう少し分量を考えようよとこれまた苦笑い。

なかなかおもしろいことをやってくれる家出少女。
あの日神待ち掲示板を使わなければ出会うことはなかったであろう家出少女。

不思議な形の少しばかり甘ったるいチョコレートをくれた家出少女。
あれからもう何年経つのだろうか。

今日はバレンタイン。
俺はあの日神待ち掲示板で出会った少女のことを思い出す。
今彼女はどこで何をしているのだろう。

あの贈り物を最後に彼女とは直接会っていない。
でも毎年律儀にチョコレートを送って来てくれる。

年々腕を上げた手作りチョコレートが今年も届く。

神待ち掲示板がもたらしてくれた出会いをきっかけに俺と彼女は一つのバレンタインチョコレートで繋がっている。
恋のキューピッドはいないけど佐川急便の兄ちゃんは毎年彼女からの贈り物を届けてくれる。

でも残念ながら俺は彼女の住所を知らないのでホワイトデーのお返しは毎年できていない。
「近いうちにまた遊びにきたいな」
あの言葉から何年も経つ。

彼女の面影を追う様に毎年この時期は神待ち掲示板を使うようになった俺。
これはもう一種のルーティーンだな。

また彼女に会いたい。
その一心でただひたすら彼女も作らず神待ち掲示板を使う俺だった。